本藍染の染料『蒅(すくも』について。 | (株)エノクの輪 / 藍染工房∞エノクの輪

2017/01/31 06:57

きょうは藍の染料・蒅(すくも)と藍建てについて少し詳しく書いてみようと思います。

本藍染に欠かせない素材の一つが、藍の染料である蒅(すくも)です。

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世界で藍と呼ばれる植物は4種類。

藍色の色素を持つ4つの植物は、インド藍はマメ科の低木・ナンバンコマツナギ。ヨーロッパや中国の藍はアブラナ科の二年草・大青(ウォード)。琉球藍はキツネノマゴ科の多年草。そして、日本の本州はタデ科の一年草の蓼藍(タデアイ)。

タデアイはこの4種類の植物の中で最も色素含有が少ない植物でもあります。

染料の製造法もタデアイの蒅(スクモ)法以外は、全て沈殿法による沈殿藍です。水を張った沈殿槽に生の藍草を入れ、色素を出した後に乾燥させる製造法です。

僕もタデアイで沈殿藍をつくってみましたが、その色素の少なさから大量にはできませんでした。

で、スクモ法は、タデアイの葉を乾燥させ、ほぼ100日間かけて寝床と呼ばれる発酵場所で、水遣りと天地返しを繰り返しながら発酵させていく製造法です。
発酵の最中は、温度は70℃近くにもなり、アンモニアガスも充満するという過酷な条件下で染料は製造されます。

現在のスクモのほぼ100%が徳島で製造され、スクモを製造する専門職を藍師と呼びます。
春先に藍の種を蒔き、真夏に2度~3度刈り取る作業、そして高品質のスクモを作る作業は、複雑な技術と重労働が要求されます。
現在、徳島の藍師は5軒(スクモを製造販売している藍農家)、製造されるスクモの年間目標は1000俵といわれています。

僕がご縁をいただいているのは、1000俵の内の半数を製造する佐藤阿波藍製造所。
僕の藍染の師は、藍と染め全般の矢野藍秀師・絞りの浩邦師・藍建てと染めの藍游師の三師ですが、浩邦師のご実家でもあります。

僕が稀代の藍師と呼び、藍師を束ねる存在でもある19代目佐藤昭人師。
何度かお会いして僕が受けた印象は、強烈なエネルギーを発散し偉丈夫な身体は岩のような感じです。
スクモ作りの最盛期ともなると近寄りがたい存在、いやスクモと同化していると自ら表現されますが、日常のその目は愛に溢れています。そして、20代目好昭師が次代を担う存在です。全国の多くの染師が待ち焦がれるという佐藤師のスクモですが、去年のお話しだと、一昨年のスクモの需要に対して供給が100俵も足りず、昨年は増産したそうです。ここでも藍の盛り上がりを感じますね!
一年サイクルの蒅作りは失敗が許されず、多くの作業は自然の循環と結びついていて、伝統の重みと深さを感じます。

こうして出来上がった藍の染料の蒅(スクモ)。これを染められる状態にするのが染師による藍建てと呼ばれる技法です。

藍建てにも様々な技法があり、本藍染と呼ばれ、古来から受け継がれた(スクモ・灰汁・石灰・ふすま)の天然素材のみで藍建てするのが天然灰汁発酵建て技法。天然染料のスクモを使っても化学薬品で藍建てする化学建て、糖を使う糖建て、スクモと化学藍を混ぜる割建てなどが大半を占めていますが、これらを本藍染として流通しているのも多々あると聞きます。
さらには、石油を原料に化学薬品で作られた合成藍で着色されているものが天然藍として流通しているとも聞きます。

要は、染めの原料と技法が表示されないのが原因なんですけどね。

藍染の魅力は、その美しさと効能にあると思います。

その両方を満たすものが、かつては本藍・正藍と呼ばれていた本藍染だと思います。

もちろん効能に主眼を置く染めの技法の存在もあってしかるべきだとも思います。

さて、本藍染・『天然灰汁発酵建て(てんねんあくはっこうだて)』の技法は平安時代に端を発し江戸時代に確立された、天然素材のみで藍建てする伝統の技法。発酵した染料をさらに発酵させて染液をつくる技法。僕はこの技法に魅せられています。

知れば知るほど藍の魅力は尽きないのです!!