2016/09/11 00:15


藍というものについて、大まかではありますが、とても上手くまとめてあるものを見つけました。

ぜひ、お読みいただけたらと思います。(以下、添付)


1、藍の歴史
藍は染料として6000年以上もの歴史を持っているといわれます。藍というのは、「藍」というひとつの植物を指しているのではなく、藍の色素を持つ植物全般のことであり、そのなかでも藍の色素を多く含み染色に適した植物を染料としているのです。

ですから、世界各国によって藍の種類は違ったものであり、ヨーロッパ方面ではアブラナ科のウォード、インドではマメ科のインド藍、沖縄ではキツネノマゴ科の琉球藍、そして日本本土ではタデ科の蓼藍(たであい)などが存在します。

 藍の開花

日本の藍染めの始まりには諸説ありますが、奈良時代に藍を使って衣服を染めたというのが始まりとされています。阿波藍の栽培は平安時代と伝えられており、最古の資料では、鎌倉時代に藍の栽培と染色の記録が残っています。藍を蒅(すくも)という染料による製法となったのは室町時代であり、その製法と染色法が安定し隆盛を極めたのが江戸時代となります。

明治以降となり、全国的にも藍が盛んに栽培されるようになりましたが、インドから安価なインド藍が輸入され始め、また、1883年(明治16年)にはドイツのバイエルにより合成藍インディゴが造られ日本にもその輸入が始まりました。その後、藍の生産は減少し、現在での生産はわずかとなっていますが、天然藍の自然発酵建てによる藍染めの美しさはその魅力を知る人にのみ根強い人気を持ち続けています。

2、藍染めの種類
先述の合成藍インディゴが一般化したため、それまでの藍をいつしか「天然藍」と呼ぶようになりました。ですから天然藍といっても阿波藍もあれば、インド藍、また、藍草を生葉染めしたものなど幅広く存在します。

 徳島産のすくも藍

また、同じ徳島産の阿波藍を使用していたとしても、その藍建ての方法(藍を染色できる状態に発酵させる方法)に違いがあり、日本酒などを入れて時間をかけて発酵させる自然発酵建てと、薬品によりその場で強制的に還元させる化学建てとに分かれます。

これらはその藍建て発酵技術、染色技術、後処理技術のレベル差もあり、見た目では比較のしようもないため、一般消費者には、それがどんな天然藍染めなのかとてもわかりにくいものとなっています。

自然発酵建て(木灰汁建て)の天然藍染めは、すくも藍自体の藍の菌自体がゆっくりと発酵を促しながら染めついているのに対し、化学建ては還元剤といわれる薬品により強制的に還元を促して染め上げます。どちらも藍の色素で染まるということに違いはないのですが、自然の好きな人であれば、薬品漬けの天然ものには違和感を感じるのではないでしょうか。

3、天然藍染めの特徴
藍で染められたものの特徴には大きく3つあるかと思います。ひとつは「藍の色彩」。ふたつ目は「藍の堅牢度(けんろうど)」。みっつ目には「藍の薬草効果」です。

 藍で染められた糸

1)「藍の色彩」における特徴

1)-1 藍は染め重ねていくことにより「甕覗き(かめのぞき)」といわれる水色から、「縹(はなだ)」という青色。そして「千歳紺(ちとせこん)」といわれる黒に近い紺色までの青系統の色彩を染めることができます。

1)-2 藍染めされたものは肉眼でみると紺一色に見えるわけですが、藍染めほど染めムラが多く、また、多くの色彩の混合(不純物の混合)により構成された紺色は他にはないでしょう。このことが藍染めの奥深く、真似のできない色彩の特徴を形作っています。

1)-3 藍や草木で染められたものは、類似色に化学染料で染められたものと比較して、一応に落ち着きを持ち、目に優しいというデータがあります。これらは、上記不純物の混合により独自の色彩を放ち、色彩面において人にやさしいということを物語っています。
















2)「藍の堅牢度(けんろうど)」における特徴

2)-1 藍は表面染色です。糸や生地の中までは染まらないということです。染められた糸を切ると、糸の表面は紺色に染まっていますが、中央部分は白っぽく残っているのがわかります。デニムなどのインディゴ染め(化学藍)の世界ではこの特徴を活かし、糸の表面のみを染色するというロープ染色法を用いています。これとは反対に木灰汁建ての天然藍染めの世界では、少しでも糸や生地の中まで藍を入れようと染色を何度も繰り返して染め上げます。

2)-2 藍染めされたものは水に濡れた状態で摩擦を受けるとはがれやすい性質を持ちます。「湿潤による摩擦堅牢度は低い」ということです。特に染め上げて間もないものは、必要以上に洗いこまないことが大切です。藍が生地と馴染み、安定してくると比較的堅牢度が高くなってくるので、湯通し、乾燥を繰り返す中で落ちるべく藍を落としていきます。藍染め製品を使っていると色移りしたりするので、色止めや洗濯方法についての質問が多いのもこの特徴が原因といえます。

2)-3 髪の毛を染めると髪が傷むように、生地や糸も染色を施すと痛むものです。しかしながら藍染めは表面染色であり藍が生地を守るため、素材に負荷が少ない染色法といえます。ただし、藍液はアルカリ性なので、染色回数が多いと素材の油分を必要以上に奪ってしまうことがあります。また、絹や革を染めるにも素材を傷めないためにそれなりの工夫が必要となります。


天然藍染め手紡糸・引っ張り強度試験(紺色)


天然藍染め手紡糸・引っ張り強度試験(千歳紺)
 






































3)「藍の薬草効果」における特徴

3)-1 植物には自然界で生き抜いていくための防衛システムがあります。それが薬草の効果として現れます。藍には殺菌効果や解毒作用、防虫効果があります。かつて鎧の下着に藍染めが用いられ、その名残で現在でも剣道着には紺色が使われます。

3)-2 藍は繊維の構造を変化させ、通気性、保湿性を高めます。藍染めの下着や靴下がもてはやされるのは消臭効果があり、肌荒れ、冷え性にもよいからです。また、木灰汁で建てた藍染めは、化学薬品を使用しないで染め上げているので、皮膚にやさしく、環境にもやさしい染め物といえます。